「正しい運指」と聞いて、基本運指と替え指の話かな? と思ったそこのあなた。
残念でした。
そういった話は詳しく解説された良い本がいくつも出版されていますので、そちらを参照してください。
ここでするのはそういった話ではありません。
新しい音を覚えたい時など、運指表を調べますね?
調べないという方は大いに反省の上、次からはちゃんと運指表を見ましょう。
調べろと言っておきながら、こう言ってはなんですが実は運指表には運指は載っていません。
では何が載っているのかといえば、どのキーを押さえ、どのキーを離すかという「指又は手の形」です。
え、それが運指でしょ!と思いましたか?
それが、違うのです。
結論から言うと「運指」とは「指の形」ではなく「指の動き方」のことなのです。
例えばドの運指を覚えることを考えます。
この時、運指表に載っているドの「指の形」を覚えたらそれでOK!ではありません。
ドの運指というのは他の全ての音からドへ移る時の指の動き全ての事です。
ド♯→ド、レ→ド、ミ♭→ド、・・・という全ての組み合わせに対応する指の動き方のセットを「ドの運指」というのです。
これで「運指」の意味は分かりましたね?
では本題の「正しい運指」です。
正しい運指には2つの条件があります。
① 全ての指が同時に動くこと。
② 正しいタイミングで指を動かすこと。
これを詳しく説明していきます。
① の全ての指が同時に動く、というのは実はちょっと不正確な言い方です。
指を動かす時にはトーンホール(指穴)を開→閉の場合と閉→開のパターンがある訳ですが、
正確には
a) 開→閉は全て同時に閉じ終わる
b) 閉→開は全て同時に開け始める
c) 開→閉と閉→開が同時の場合は、閉じ「終わる」のと開け「始める」のが同時になる
ように動かします。
c) が分かりづらいという方への補足。
開→閉と閉→開を同時に動かし始めると、指を動かし始めてから動かし終わるまでの僅かな時間に、どちらの指穴も半端に開いている状態が出来てしまいます。
こうなると違う音が出るか音が出ないかということになります。
ですから、閉じ終わるのと開け始めるのが同時になるようにタイミングを合わせる必要があります。
② 運指の正しいタイミングはいつか、の答えは発音と同時です。
スラーのかかっているフレーズやレガートに演奏する場合、大抵の方は音が変わる時点で指を動かしています。
ところがスタッカートの付いたフレーズなど、音の後ろに短い休符がある場合に早めのタイミングで指を動かしてしまう人がとても多いのです。
とても多いどころか、全員がそのように演奏していると言っても過言ではありません。
運指のタイミングが早すぎると、音の終わり方が雑に音の替わり目が曖昧になります。
演奏を聴いてなんだか音が汚いと感じる時、早すぎる運指が原因であることが殊の外多いのです。
トリルや前打音を演奏する際も、多くの人が運指が早まる傾向がありますので要注意です。
運指のタイミングに関する例外は完全に無音の状態から発音する場合です。
例えば曲の一番始めの音や、長い休符の後の最初の音などですね。
この時は予め指の形を作っておいて構いません。
また、短い休符があってもその休符から和声が変わっている場合は運指を早めに変える方が合理的です。
最後にちょっとしたヒント(管楽器用)を書いておきます。
指の形で音の高さを決定し、息でリズムを作っている(と思っている)人がとても多いですが、
音の高さを決定する体の形で、リズムは運指で作るものです。
※リズムはこの場合、音の長さの組み合わせを指しています。