フェルマータ 2021.10.23

私が曾て音楽のレッスンを受けた時、フェルマータ(fermata)が付いた音は2倍くらい伸ばすのだ、と教えられました。

これは大きな間違いです。

まだ多くの言葉を知らない子供に教える場合、完全に正しくはなくても理解しやすい言葉で伝えるということ自体は否定しません。

でも2倍くらい伸ばすはアウトです。

 

フェルマータの一義的な意味は「停止」です。
何が止まるのかと言えば、拍が止まります。

ではどのくらい止まるのか?
それは分かりません。
拍が止まるということは、音楽の流れ、時間が止まると言い換えても良いでしょう。

つまり止まっている「時間」の中で停止する「時間」の長さを計ろうとするのは無意味です。


そうは言っても客観的に時計で計ればフェルマータ付けられた音は音価より長くなる筈だ、
と思いますか?

残念乍らそうとは限りません。
長くなるかも知れないし、ならないかも知れません。
というよりも、そんなことを気にしていること自体が不適切です。
大事なのはそこで「止まっている」ということです。

【おまけ】
フェルマータについて調べたことのある方なら、元々フェルマータは曲の最後の小節線の上(音符の上ではなく)に置かれてその曲の終止を表していたことをご存じでしょう。
バッハのコラールなどではフレーズの終わりにフェルマータが付されていますが、これも音を長く伸ばすという意味ではありません(フレーズの終わりなので長く引き延ばしてもさほど違和感はありませんが
)。

その後紆余曲折を経て、作曲家によっては何種類ものフェルマータを使い分けて休止の「長さ」を使い分ける人まで出てきますが、これなども客観的時間の長さというよりは「盛り上がりの程度」だったり「断絶の大きさ」などとして捉えた方が良いのではないかと私は考えています。