フルートを「吹く」こと 2021.3.20

フルートを習おうとする方が最初に犯す間違いは「吹いて」しまうことです。

「何言ってるの?フルートは吹くものでしょ?」って思いますよね。

問題となるのは言葉の持つイメージです。

 

「吹こう」とする時に多くの人は口をすぼめ(=息の出口を小さくし)、更に肺に圧力をかけて息を押し出そうとします。

これではホースの先を指で塞いで水を勢いよく出すのと同じで、潰れた空気の束が乱暴に出てしまいます。

美しい音を出すのに必要な空気の量はもっとずっと少なく、スピードもゆっくりなのです。

 

単に呼吸をするだけの場合、肺の中の空気を出し切るのにかかる時間は精々2~3秒です。

この時、特別に力を入れなくともほぼ全ての息を出し切ることが出来ます。
ところである程度訓練をしたフルート吹きであれば30秒、あるいはもっと長く音を出し続けることが出来ます。

相当大きめの音を出したとしても、10秒程度出し続けることも可能です。

ということは、何も力を入れずに息を吐いた時よりももっと少ない息で演奏しなければならないということです。

「吹こう」として息を出す方向に力を入れるなど論外だということが分かるでしょう。

 

では「弱く」吹けば良いのだろう。これも間違いです。

「強い」「弱い」というイメージは「力を入れる」「力を抜く」ことに直結しがちです。

息の出し方に関して言えば、強く吹くことは出口を塞いで力を入れることに、弱く吹くことは口を広げて頼りない息を出すことにしかなりません。

 

息を吸った時の体は膨らんだ風船と同じで、力を入れるまでもなく空気はどんどん出て行ってしまいます。

ですから、息を吸った状態の姿勢を維持するように胴体の筋肉を使います。

つまりゴムを引っ張っている状態から、徐々に戻すイメージで息を「吐く」のです。

 

唇を閉じようとする力を入れつつ、息を押し出すというやり方をする限り、無駄に疲れるだけで決して美しい音は出せません。

唇を軽く閉じた上で中央部だけしっかり開き、息をゆっくり吐くようにすると驚くほど楽に音が出せるようになります。
是非お試し下さい。