指が速く動かない 2021.8.19

フルート学習者の三大お悩み、(大きな)音が出ない、息が続かない、指が速く動かない、の最後の項目になります。

指が早く動かないと思っている方は、まず「指を速く動かす」という認識が間違っていることを自覚しましょう。
※ 基礎講座『テンポ』参照。

速く動かす必要はないことは分かっても、やっぱり指が上手く動かない、と感じる方も多いでしょう。
指が上手く動かないと感じる場合にはいくつかのパターンがあります。

【パターンA】そもそも基本的な運指を覚えていない。
 → 音階や音数の少ないフレーズを練習しましょう。
【パターンB】運指は覚えているが、同時に動かす指が揃っていない。
 → 矯正法は別項目『指の動きを揃える為の練習法(未公開)で解説します。
【パターンC】運指は揃っているが、タイミングが早すぎる。
 → 実はこのパターンが一番多く、自覚がない場合が殆どです。
【パターンD】物理的に難しい運指である。
 → 本当に難しい運指には大抵は替え指があります。
   モダン楽器の場合はその運指専用のキーがある場合もあります。
   ※ 運指とは指の形の事ではなく、ある形から別の形へ変えることです。基礎講座『正しい運指』参照。

ここで【パターンC】についてもう少し詳しく検討してみます。
現在まで私が見てきた限りでは、この運指が早すぎるという問題はほぼ全ての人に見られます。
自覚がない以上、自然に直る事はほぼないので当然といえば当然ですね。
運指が早いとこのような事態が起こります。
・音が汚くなる(ように聞こえる)。
・ピントの惚けたような演奏になる。
・テンポ、リズムが安定しない。
・少し難しいフレーズで引っかかる、止まってしまう。
 
上の3つは、良い演奏と聴き比べないと分かり難いかもしれません。
しかし最後の1つは簡単に認知できますね。
フレーズの途中で止まってしまうことがあるのなら、その原因が運指にあるのかどうかを確認します。
運指が早すぎる為にフレーズの途中で引っかかる事態は次のようにして起こります。
1. 運指のタイミングが早すぎる為に、頭の中で鳴っている音と実際に鳴る音がずれ、脳が軽いパニックを起こす。
2. 発音のタイミングがイメージとずれると運指が遅いと感じ、次の音に対してもっと早く指を動かしてしまう。
3. 習熟の度合いに応じて、指が揃わないという問題も同時に出現する。
4. 1〜3を繰り返した結果、音数がある程度以上のフレーズではいずれ破綻する(演奏が止まる)
思い当たる節はありましたか?
この場合、止まってしまう箇所の運指の練習にあまり意味はありません。
それ以前に破綻の芽があるのですから、フレーズを遡って問題の箇所を特定しなければなりません。
この問題を修正するには、まず運指のタイミングを意識する必要があります。
そして運指が早すぎる時の音を細心の注意を払って聴いてください。

自分の出している音と音の変わり目や休符の直前の音の終わり方をよく聴いてみてください。
2つの音の間にどちらでもない音や少し歪んだ音が僅かでも混じるようなら、タイミングがかなり早いということです。
微妙にタイミングが早い時は音が一瞬途切れる場合もあります。
運指が早すぎる場所が見つかったら、まずはスラーで音のタイミングを合わせます。
最後の音の場合は、音が消えた後も指の姿勢を変えずに保ち、次のフレーズの最初の音に運指を合わせます。
あとは注意しながら何度か繰り返すだけです。
ある程度習熟した段階で、運指を意識するのを辞めてください。
その後は音だけをイメージし、音だけを聴きながら練習を重ねます。


繰り返しになりますが、これはとても自覚するのが難しい事柄です。
これまでに運指のタイミングを気にしたことがないようなら、運指が早すぎる問題を抱えていると思ってまず間違いありません。
そのつもりで、ご自身の演奏を注意深く観察することを強くお奨めします。