トリル 2021.7.9

トリルは音符の上に「tr」という記号を書いて表します。
少し古い時代の楽譜の場合は「+」等を使う場合もあります。

記譜上の音(主音符)とその2度上の音(補助音)を交互に滑らかに演奏します。

特別な場合以外は主音符で始まり主音符で終わります。ドのトリルなら〔ドレドレド(略)レドレド〕

補助音は調号に従って曲の音階上の音になりますが、そうでない場合は「tr」記号の上に変化記号(♯、♮、♭など)を付加します。

 

2音符以上にまたがるトリルの場合は「tr〜〜〜〜〜」のように書く場合もあります。
このような場合まとめて1つの音になる訳ですが、通常タイは付けません。

逆に同度の音が連続し、各音にトリルを付けたい場合は夫々の音の上に「tr」を付けます。

 


【よくある勘違い】
・出来るだけ速く(本当は「細かく」若しくは「短く」というべきですが)演奏しなければならない。
・各音を均一な長さで演奏しなければならない。

・音の最後の瞬間まで動き続けなければならない

全て間違いです。

と言ってもどんな場合でも上のようにしてはいけない、という事ではありません。
必ずしも細かくする必要はないし、ずっと均一とは限らないし、音の途中で動きを止めることもある、という事です。

ではどうすれば良いの?という質問にはケースバイケースですとしかお答え出来ないのですが、ある程度の目安としては下のように考えると良いでしょう。
但しこちらも「必ずしなければならない」ではありませんので、呉々もご注意ください。


・トリルの速さ(音がいくつ入るのか)はテンポが速い時は多め、ゆっくりの時は少なめ。

 但し、1拍に3つや4つ丁度にするとトリルには聞こえ難くなります。

 1つずつの音を意識できるほど長く演奏しないようにしましょう。
・トリルを演奏し始めた最初の音はほんの少し(1.1倍〜2倍)長め(強めではありませんよ)にすると綺麗に聞こえる場合が多いです。
・静かに終わるトリルやデクレッシェンドしながらのトリル、鋭い音に付いたトリルの場合などは途中で動きを止め、主音符で伸ばすことも検討しましょう。


【ありがちな間違い】
上に挙げた勘違いの他に、演奏の際に陥りがちなミスがいくつかあります。
 ① トリルの付いた音だけ強く(大きく)なる。
 ② トリルの最後まで同じ強さ(大きさ)で演奏する。
がそれです。

① はとにかく速く演奏しようとする余り、力んでしまうことが原因です。
まずはゆったりと演奏してください。

音数を闇雲に増やす必要はありません。
1拍に5〜6つ程度入れば充分ですし、テンポの速い曲であればもっと少なくても構いません。

② まずトリルを付けない状態で演奏し、その音のニュアンス(音量や音色の変化や音の長さ)を確認してください。
次にそのニュアンスのまま、トリルを付けます。

音量がある程度以下になったところで動きを止める(主音符で伸ばす)と良いでしょう。

 

 

【特別な場合】
最初に書いた特別な場合の1つは、バロック時代近辺のトリルです。
記譜法や奏法というのは時代や地域、作曲家に寄ってかなり大きな違いがあり得るので、
ここに挙げるのは飽くまで一般論だということに留意してください。


バロック音楽のトリルは主音符から始まることは稀です。
多くの場合、補助音(2度上の音)から始まります。
ドのトリルなら〔レドレド(略)レドレド〕
トリルの付いた音の1つ前の音がそれより低い音の場合、下の補助音(2度下の音)から始まることもあります。〔シドレドレド(略)レドレド〕
主音符から始まることも皆無ではありません。

 

さらにトリルの最後に後打音が付くこともあります。
〔レドレド(略)レドレドシorレ〕や〔レドレド(略)レドレドシド〕

これらは記号としては特に区別はなく「tr」または「+」と書かれています。
「+」はバロック時代によく使われたトリル記号です。
どのように演奏するのが最適か判断する目安は、いずれ別項目で解説できればと思っています。

 

【補足】後打音付きのトリル
後打音付きのトリルも不自然になる場合が多いので、文字だけでは分かりにくいとは思いますが軽く言及しておきます。

後打音付きトリルは主に次の2種類があります。

 

① トリル付きの付点四分音符の後ろに八分音符(長い後打音)というパターンの場合

 この八分音符は更に次の音の先取音と考えることも出来ますが、トリルの処理としてはあまり変わらないのでここでは後打音と呼ぶことにします。
② トリルの付いた音符の後ろに2音の装飾音符(小音符)が付いているパターン

 

① ではトリルの主音符が八分音符に対する倚音の様な役割になるので、付点音符の最後まで細かく動くと重さが足りないことになります。大凡ですが四分音符相当の間トリルの動きをし、トリルの最後はほぼ八分音符分、主音符の音を伸ばして(トリルの動きを止めて)から、次の八分音符に移ります。
〇〔ドレドレドレドレドーーーシーーー〕 ×
〔ドレドレドレドレドレドシーーー〕

 

② こちらのトリルは逆にトリルの動きを最後まで止めません。
〇〔ドレドレド(略)レドレドシド〕 ×〔ドレドレド(略)レドレドーーーシド〕