息が続かない 2021.4.16

フルートを始めた方の多くが「息が続かない(一息で長く吹き続けられない)」と訴えます。

と言う訳で、今回はその原因と対処法を取り上げます。

これは10〜15秒程度しか吹き続けることが出来ない方が対象の話になります。

 ※ 一息で吹き続けられる時間が10秒以内という方はシャボン玉をゆっくり膨らますなど、息を少しずつ出す練習をしてみましょう。

 

最初の質問です。

もうこれ以上吹き続けられない、と思ってブレス(息継ぎ)をした時に「息苦しさ」を

感じましたか?

 

【息苦しさを感じなかった方】

おめでとうございます。
息を出し過ぎています。

通常の呼吸は概ね3〜4秒で1回吸って吐くので、1.5〜2秒で肺の中の空気を出しきること

になります。

 ※ 厳密に言えば全ての空気を出し切ることは出来ませんが、出せる息を全てと考えてください。

とすると、20秒間音を出し続けるには通常の呼吸の1/13〜1/10ずつ出せば良い訳です。

そんな少ない息では音にならないという場合は、奏法が間違っています。

最初はごく小さな音で良いので、音が出るまで息を出すのではなく、少ない息で音が出る

ポイントを探してください。

 

【息苦しさを感じた方】

次の質問です。

本当に息苦しいと感じましたか?

 

吐く息がもうないのだから苦しいに決まっている、と感じた方もいるでしょう。

「肺の中に空気がないと息苦しい / 肺の中に空気があれば息苦しくない」いう認識で

いる方は、次に書くことを試してください。

 

まず息をしっかり吸って、吐かずに息を止めてみましょう。最初は苦しくありません。

でも次第に苦しくなってきますね。肺には空気がたっぷりあるにも関わらず。

 

次に息を最後まで吐ききって(自然に出せるところまでで充分です)、吸わずに息を

止めてみてください。すぐに息苦しく感じるでしょうか?

 

最初は苦しくありません。でも次第に苦しくなってきます。苦しくなるまでの時間は

息をしっかり吸った後で止めた時と殆ど変わらない筈です。

 

つまり肺の中に空気があろうとなかろうと、苦しくなる時は苦しくなるし、苦しく

らな時は苦しくならないのです。

さて、冷静になってみると出せる息がなかっただけで実は苦しくなかったという方。

おめでとうございます。【息苦しさを感じなかった方】へ。

 

【本当に息苦しさを感じた方】

10秒や20秒吹いただけで息苦しく感じるようでは楽しく演奏はずの演奏が苦行に

なってしまいますね。

今すぐ改善する必要があります。

 

まずは「息苦しい」とはどういう状態か考えてみましょう。

上に書いたように肺の中に空気があるかどうかは全く関係ありません。

足りていないのは血中酸素濃度(SpO2)です。

血中の酸素の量が低下すると、体にとって危険なので脳が「苦しい」と感じる

仕組みになっています。

 

酸素の消費率が肺の中の空気の消費率を超えると、息を出し切る前に息苦しさを

感じることになります。

ここで「空気がない」と思って息を吸ってしまうと、まだ肺には空気が残っている

ので充分な量の新しい空気を取り入れることができません。

すると肺の中の空気の酸素濃度が低下し、血中に取り込める酸素量も低下します。

充分な酸素を取り込めていないのですから、最初に吹き始めた時よりも苦しく感じ

るまでの時間 = 吹き続けられる時間が短くなります。

ここでまたブレスをすると、肺に残っている空気の量は先ほどよりも多い状態なので

吸える空気の量がもっと減り・・・・という悪循環に陥ります。

長いフレーズを吹いている時にブレスの間隔がどんどん短くなる方はこの悪循環に

陥っているのです。

演奏中にこうなってしまったら、まずは冷静に苦しいのを一旦我慢して息を出し切って

ください。その後息を吸いなおせば、一旦はリセットすることが出来ます。

但し、根本的な奏法を見直さなければ同じ事の繰り返しです。

 

根本的な解決は酸素の消費量を減らすことです。

では酸素はどういう時に使われるのか。

体の中では、筋肉を動かす(力を入れる)時や物事を考える時に酸素を消費します。

強く力を入れる程、そして沢山考える程、酸素の消費量は増加します。

 

ではその消費量を減らすには?

無駄な力を抜き、余分な事を考えないようにするのです。

 

 無駄な力とは

楽器をしっかり握りしめる、キーを押さえつける、指を必要以上に大きく動かす、

力を込めてタンギングする、唇を締め付ける、歪んだ体勢をとる、音楽と無関係な

体の動きをする、など。

─ 余分な事とは

この音はドだ、人差し指を上げよう、この音符は4分音符だ、フォルテで吹こう、

ブレスしなきゃ、など。

但しこれらに関しては楽器を演奏するのに慣れることで、ある程度は緩和されます。

 

ですから今すぐ取り組むべきことは、不要な力を使わずに演奏できるようにする

ことです。

 

まずは演奏する時の姿勢、楽器の持ち方、指の動かし方をチェックしてみましょう。

 


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因みに、もっと沢山息を吸えば良いのでは?という考え方は
大抵の場合、失敗

(というよりも悪化)します。

 

それは何故でしょうか?

 

通常よりも沢山の息を吸い込もうとすることで、まず余分な力が入ります。

そこで酸素を余分に使ってしまうので、よしんば沢山息を吸えたとしても、その吸った息が

無駄になります。且つ沢山吸った分肺に残る空気の割合も大きくなるので、上記悪循環の

サイクルが早まります。

 

そして目一杯息を吸った状態は、大きく膨らんだ風船と同じで空気を押し出す力も強く

なります。

きちんと吐く息の量をコントロール出来ない場合、息を出し過ぎることになりますし、

コントロール出来たとしても、そこで通常よりも大きな力を使わざるを得ません。

 

結論としては今楽に吸うことが出来る息よりも多めに吸うことには、殆ど意味はありません。

練習を続ける中で楽に吸える量を徐々に増やすのはOKですが、今すぐにこれまでよりもよりも

多めに吸おうとするのは辞めておいた方が良いでしょう。