スタッカート(staccato)は符頭に付いた点で示されます。
スタッカートの意味は「音を短く」と習いましたか?
それとも「半分の長さ」でしょうか。
「弾むように演奏する」と教えられた方も居るかも知れません。
残念乍らどれも不正解です。
スタッカートの『意味』は、スタッカートの付いた「音を分離する」ということです。
その為の『奏法』として通常は「音を短く」演奏します。
スタッカートで演奏した『効果』のひとつとして
「弾むような印象を聞き手に与える」場合もあります。
意味と奏法と効果を混同しないよう注意してください。
結果としてはスタッカートの付いた音を短くするという答えで間違っていないじゃないか、
と思う方も居るかも知れません。
確かに同じ結果になる場合もありますが、必ず同じになる訳ではありません。
スタッカートの付いた音を短くするだけでは、その音と次の音が分離するだけです。
その音の直前にも音がある場合は、直前の音も同様に短くしなければ
スタッカートの付いた音とは分離されません。
と言う訳で、スタッカートの正しい奏法は「スタッカートの付いた音と(あれば)その直前の
音を短く」するということになります。
但し、以上の説明は飽くまで原則です。
単純に短く演奏して欲しい音にスタッカートを付ける作曲家の場合、
本来スタッカートを付ける必要のない直前の音にもスタッカートを付けることが多くなります。
また既に休符などで音が分離されている場合であっても、弾んだ音や鋭い音などが欲しい時には
スタッカートを付ける場合もあります。
より短い音価で演奏して欲しいが記譜が煩雑になる、という理由でスタッカートを使う場合も
あるかも知れません。
因みに「音の長さを半分にする」という意見が普及した原因はスタッカートの演奏例
ではないかと考えています。
記譜 4分音符にスタッカート
演奏 8分音符と8分休符
このような譜例(↑)を見たことがある方も多いでしょう。
この譜例は音を「短くする(=隙間がある)」ことを端的に示しただけであり、長さを半分に
して欲しいという意図ではありません。
より正確に言うなら(曲調によって長さは色々あり得るのですが)概ね半分「は」伸ばして
欲しい、というのが作曲家の意図だったりします。
というのは、自分では8分音符のつもりで実際は16分音符や32分音符で演奏している方はとても
多いからです。
私の経験ではこれまでレッスンに来た生徒さんは一人の例外もなく、短すぎるスタッカートで
演奏していました。
ですから、まずは正確に半分の長さで演奏する練習をしてください。
次に長めのスタッカート、そして少しだけ短めのスタッカートの練習を。
その後に、スタッカートの原則を理解した上で作曲家による記譜のクセを考慮し、
どのような効果が望まれているのかを読み取った上で奏法を選ぶようにしましょう。
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極論ですが、音が分離しているように聞こえさえすれば、音を短くしないスタッカートも
有り得るかもしれませんよ。
やる気のある方は考えてみてください。