意味と奏法と効果 2021.7.14

この「基礎講座」では、記譜された様々な記号の中でも勘違いされがちなものを少しずつ解説していますが、今回は少しざっくりと全体のお話をします。

 

よく見かける記号の意味を尋ねると、大抵はこういった答えが返ってきます。

 

① スラー

 タンギングしないで(弦楽器の場合は弓を返さないで)演奏すること。

フェルマータ

 程よく(?)長く演奏する。または、2倍くらいの長さで演奏する。

③ スタッカート

 弾むように演奏する。

 

これらは全て意味と奏法と効果を混同していることから起こる勘違いです。

夫々の詳細は別項目で言及しますからここでは深入りしませんが、①と②は意味と奏法を

③は意味と効果を取り違えています。

 

どれほど簡単に思える記号であっても、一度下の手順で考え直してみることをお奨めします。

簡単だと思っている事というのは、意識化に刷り込まれているために意識的に考える事が出来なくなった事である場合も多いものです。上の例のように子供の頃や始めたばかりの頃に習い覚えた事は殊にそうです。

 

a)記号や言葉の意味を理解する。
b)その意味を音で表現するために必要な措置=奏法(ex. タンギングをしない、音を短くする、長めに演奏する etc.)を考える。
c)演奏の結果生まれる印象=効果(ex. 明るい、悲しい、しっとりしている、跳び跳ねている etc)を想像する。

ここまで出来たら次は

d)想像してみた効果がその曲やそのフレーズに見合っているかどうか考えてみてください。
e)なにか良くないと感じたら、a), b)からもう一度考え直しましょう。
f)これでOK。と思ったら、別の方法もないか考えてみると尚良いでしょう。


では、健闘を祈ります。

 

 

【補足】

記号の意味や奏法は時代や国によって変わってゆきます。

一人の作曲家の中でさえ変わることもあり得ます。

また、1曲の中でも1つの記号をいつも同じように処理すれば良いとは限りません。
同じパターンだから同じに演奏する、というのも感心しません。
いつでも目の前のこの1音の最善は何かを問い続ける姿勢を持っていたいものです。